◎食物網のプロセスを理解するうえで、近年、空間的な要因を考慮することの重要性が説かれている。水系でも動物プランクトンが空間的に集合する現象については、さまざまなパターンとプロセスが考えられている。にもかかわらず、従来の湖沼における食物網の研究の多くが湖沼を均質であると捉えており、こうした動物プランクトンの空間的パターンやプロセスが、特に下位の栄養段階である藻類に対していったいどのような生態学的な役割を持っているかという疑問についての研究は驚くほど少ない。
◎ 動物プランクトンが藻類に対して与える影響には大きく分けて、『捕食』と『栄養塩の再供給』の二つがある。近年、後者の栄養塩リサイクルが藻類群集の成長と競争に与える効果について大きく着目されつつある。これまでの消費者による栄養塩リサイクル(CNR)を考慮したモデリング研究例では、CNRは多様性を下げる要因であると考えられている(Andersen 1997; Grover 2002)。しかし我々は、これまでの研究で、空間的な要因を考慮することで、消費者による栄養塩リサイクルの時間変動が、藻類の一時的な多様性を高くする可能性を示した。
◎ 消費者である動物プランクトンの空間的な不均一性がリサイクルされる栄養塩の空間的な違いを作る可能性がある。動物プランクトンの集合プロセスの違いは消費者のリサイクル効果の空間的パターンに変えるため、栄養塩を巡る藻類の局所的な競争関係が消費者の集合プロセスによって変化し、系の藻類の多様性が変化すると考えた。
◎ そこで、生態学的なプロセスの中で消費者のパッチが持つ役割の一例として、空間構造と栄養塩リサイクルの効果を考慮したモデルを考える。消費者のパッチ集合プロセスの違いが藻類の競争と多様性にどのように影響するかを比較する。