ある生物が何を食べようとするか?という疑問は、ある種における餌のnicheがどのようにして決まっているのか?という問いに置き換えることができる。食物網構造の基盤である「食う―食われる」関係の多様性・複雑性がどのようなメカニズムで形作られているかという問題は、現実の生態系での食物網について理解するための基礎的なテーマである。
古典的な摂餌戦略理論では『最良の餌が十分にあれば次善の餌は選ばない』と予測されている。ここでの「最良の餌」とは、例えばカロリー量や摂食コストが指標であり、従来、餌のエネルギー価値だけが評価されてきた。しかし、生物にとって重要な資源がエネルギーだけでないことは明らかである。近年、生態化学量論の立場では、エネルギー量だけに着目するのではなく、餌に含まれるエネルギーと物質的資源、もしくは、資源同士のバランスに着目することの重要性を指摘している。
そこで本研究では、生態化学量論にもとづいて摂餌選択を行う消費者生物が、個体ごとに摂餌戦略を進化させる個体ベースモデルを考え、資源バランスが化学量論的に異なる複数種類の餌をめぐる進化競争実験を行った。
まず、消費者一種による種内競争モデルを用いて、餌の量と餌利用戦略について従来の予測を支持するだけでなく、どれだけ餌が豊富にあってもspecialistではなく「組み合せ型摂餌」が適応的な戦略となる場合があることを示した。次に、消費者2種による種間競争モデルを用いて、specialist種と「組み合せ」型戦略の消費者種の進化と共存のパターンには、競争種間のニッチ類似度が重要であることを示した。さらに、従来、系の生産性の増加に伴って食物網における種多様性が変化するという研究が多くなされてきたが、それだけではなく、食物網の構造自体が単純化する可能性があることを示した。
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